潮風の消える海に

神奈川県横浜市鶴見区に広がる工業地帯。
意味などない、ただの行き止まりの、詰まったクソみたいな場所。
誰も来ないはずのこの場所でぼんやりと海を眺めていた進は、偶然、この場所に訪れた東上浩介と出会う。浩介はつまらなそうにしている進に話しかけ、水没したヨットの再生計画をもちかける。

http://www.light.gr.jp/light/products/siokaze/

 とぼとぼ歩いて行ける範囲の我が地元が舞台になってるとゆーのが主な理由で購入、読了。や、読了つーのも違和感あるが。
 地元民であるおれは気分的にはいわば常にロケハンしてる範囲なわけだし。だから、どーゆーふーに風景を切り出すのかなあと気になってたので。
 残念ながら、背景枚数あんま多くないし、個人的にほぼチェック済みの風景ばかりで期待した新鮮な視点は無かった。
 まあ低価格ソフトだしな。そこに不満は無いが。
 
 で、まあ。
 実際にどーなのかは知らんのだけど。現実的日常に立脚した設定で、主人公を含め、メインの登場人物が全員高校生なのに、学校という場所が舞台としてまったく登場しないのはちょっと珍しいかも、と思った。
 学校面白くないから、学校さぼって集まった若者達のハナシなんだから当然でもあるんだけど。
 つーか、やけに現実的なハナシにしよーとしたら、別に学校って面白い場所じゃねーよな、ってコトでもあろうかなあ。「学園」じゃねーんだから、っつーか。
 普通に良く出来た成長譚で、いろいろあって(逃避、脱出の検討とか)でも親や社会と向き合って、恋愛成就、最後は目的意識を持った進学が示されて終わるわけだが。
 つっても、まあ、ツクリ自体は学園ものと同じで。
 ヨット修理の現場はつまり「部室」だ。草っぱらから、工場跡への移動は「同好会」→「正規の部活」(社会化)とかに対応する。
 例の「〈境界〉としての屋上」には海芝浦駅ホームが割り当てられてる。つーか、おそらくそれが着想の起点だろうね。
 が。そのような〈境界〉なり〈約束された場所〉なりの特別な場所、物語のはじまる場所を用意して、そこで最初に起こす出来事をボーイミツーツガールじゃなくてボーイミーツボーイにズラしたのは、うーん、まあ、意味も意図もわかるよーな気はするけど、どうだろう、どうか。微妙に散漫な印象が残る。尺の短いハナシなんだから、もー少し整理しても良かった気はするかも。
 場所との結びつき、を意図して選択されたであろう舞台設定が活かされているとは言い難く、厳しく言えば思い付きの域を出ていない気も*1
 まあ、自意識や気分をもてあました主人公「どこにも行けない」気分になると訪れる「行き止まりの駅」なわけで、最初から青臭い感傷にすぎないのだと言えるし、そのコト自体は作者も承知だろうとは承知だけど。
 主に主人公たちとそのの親との、(子供側の)勘違いによる葛藤がキモで、成長して多面的な理解が出来たんでイイカンジになってよかったね、ってハナシなんだし。そこに重ねて、
>意味などない、ただの行き止まりの、詰まったクソみたいな場所。
 を、意味はあるし、ただの行き止まりじゃないし、詰まったクソみたいな場所じゃないし、なかった、と読み替えさせた方が良かったんじゃねーかなあとは思う。や、まあ、普通に劇中でいろいろ楽しく過ごしたので彼らにとって「思い出の場所」みたくなってるのは表現されてるし、行き止まりを出発点ととらえなおす視点も提示されてるけどね。
 さておき。
 気分のすれ違い、みたいなののカンジを妙にちゃんと書いててなんとなく感心した。つーか、全体に生真面目な筆致。そういう真面目さそのものは好感もてる、んだけど。趣味的には微妙。普通に感心するし、面白いとも思うけど、や、ほら、我は悪趣味ゆえ。
 あと。エロシーンが少ないのは、まあイイんだけど、エロ絵はちょっと少なすぎなんじゃねーかなあ。
 とかなんとか。
 

 あー。そうそう。高校生を登場人物とした等身大の成長譚、みたいな物語である種のメッセージ性も適度に含まれてて、なんつーか中・高校生向けなストーリーなんだけども。ども。エロゲなので18禁。
 や、まあ、中・高校生向けなストーリーやメッセージなんて当の中・高校生にとっちゃウザい説教だけどな。つか、『潮風の消える海に』作中でも真摯に伝えたい想いが「真面目な意見」なカタチであるが故に、相手に「説教」とか言われてしまうってすれ違いが描かれてる。
 簡単ではないよなあ、とか思う。
 
 

 むー。
 http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/nisenikki.html
 07/02/07(水)の記事つーか日記とかも、参考。
 

 夜を往け
 http://utahime.sukinano.net/words/01_orialbums/01_orialbums18.html#anchor1281077
 
 此処じゃない何処かへ
 http://utahime.sukinano.net/words/01_orialbums/01_orialbums20.html#anchor906275
 
 や、まあ、オザキでもイイんだけどナカジマで。
 
 で。
 此処じゃない何処かへ夜を往った末路が、
 
 ばいばいどくおぶざべい
 http://utahime.sukinano.net/words/01_orialbums/01_orialbums10.html#anchor1015654
 
 ミュージシャン
 http://utahime.sukinano.net/words/01_orialbums/01_orialbums15.html#anchor537931
 
 やってられるか。

*1:舞台設定をとりたてない、なら逆に過剰だ。